Last Vacation~London life with kids~

コロナ禍の2021.4~2023.1まで一家でロンドンに住んでいました。現地校に通っていた6歳児と1歳児とのロンドン生活と欧州旅行の記録。帰国後noteも始めました。https://note.com/yukolife_2015

『北欧流小さくて最強の組織づくり』から生産性向上を探る

5月にスウェーデン人女性をゲストに迎え、スウェーデンの「働く」や「暮らし」に関する価値観を学ぶトークセッションを企画しています。

 

スウェーデンの生産性を組織のマネジメントの観点から探れないかと

こちらの本を読みました。

■生産性が高い北欧諸国

北欧諸国の「働き方」といえば、生産性の高さが話題にのぼります。また北欧諸国は幸福度の高さも上位に占めています。一方、日本はと言うと、なかなか高まらない生産性。そして豊かな国でありながらも幸福を実感しにくい国だと言われて久しいです。

 

私が働いていた会社は、現場への権限委譲を推し進め、現場の声を聞く努力もしていましたが、労働集約産業という側面もあり、どちらかと言えばトップダウン型。上司や関係役員の意向を組みながら、とにかく作業に追われる日々。施策を進めるうえでの根回しに、また仕事がらみの飲み会に…ととにかく自分の業務を俯瞰する余裕もなく、毎日早朝から深夜まで働いていました。もちろん自分の能力不足は多分にあったと前置きはしたうえで、けれども組織的な課題もあったのではと振り返ります。

 

■北欧型組織の特徴

北欧型組織の特徴、それは官僚的な風潮を嫌い、現場への権限委譲の促進。

この背景は、北欧のバイキング文化が現代の企業の組織運営にも受け継がれているからだと言います。その特徴は以下のとおり(本書から一部抜粋)。

 

◎フラットな組織

・階層をなるべく少なくしたフラットな組織

・地位や肩書を日本のように重視しない

・組織内の権力格差は極端に小さい。上司だからといっていばることなく、チームメンバーを尊重する。

・リーダーは肩書で引っ張るのではなく率先垂範で背中を見せる

 

◎権限委譲

・部下、現場への権限委譲が当たり前。権限委譲の際、日本人は細かい規程をつくりそれに基づいた判断を部下に求めるが、そのようなものはない。

・日本型の組織は現場が自らが考え、判断することを好まないが、北欧型は現場が自ら考え、自らリスクをとる。

・いちいち手続きを経て、オフィシャルに上司の承認を得て動くのではなく、その場で話し合って即断即決できるよう組織の風通しをよくする。

 

◎情報の透明性

・情報の透明性を重視(権力格差が小さい組織ではメンバー全員のコンセンサスを重視ため情報を広く公開)

・チームが達成すべき目標は、マネージャーが情報を開示し、グループ単位で話あって決定される。そのため部下にとってより納得性の高いものになる。

・目標はトップダウンでおりてくるものではなく、事前にチーム内で討議される。

 

◎コミュニケーション

・リーダーが現場でスタッフと和気あいあいとコミュニケーションをとりながら、リーダーとしてシンボリックに行動することでチームを引っ張っていくスタイル

・上の方の人も気軽に話を聞いてくれる

・相互信頼。辞令一本で人を動かすことはまずしない。そのかわり丁寧に説明し、エンゲージメントをとりつける。

・チームビルディングに尽力し、時間を費やす。

・前例や形式にとらわれず、上司と部下がなんでもすぐに相談できるようにする

 

◎カルチャー、企業文化

・企業組織としての行動規範が明確に定められている(Valueのようなもの)

・会社は雇用の際、候補者が会社のカルチャー、運営に適合するかを見極める

 

また、個別具体的な話でいくと、北欧型企業は、時間外の飲み会等は基本なし。接待文化もなし。そのかわり「お茶」の時間を大切にしているとのこと。

会社員時代「しんどいなぁ~」と思う飲み会も正直ありましたが、飲み会に参加することでカウンターパートナーと関係を深めることができたり、上司や先輩から貴重な経験談を伺えたりといった機会が沢山ありました。仕事とプライベートのオンオフができている北欧の人たちは「お茶」が日本の「飲み会」の代わりになっているそうです。スウェーデンの人たちは「フィーカ」といってお茶の時間を大切にすると聞いてはいましたが、会社においてもそうなのですね。

 

■北欧型組織の根底に流れる価値観

前述のとおり、北欧企業の組織文化はバイキング文化が影響していると書きましたが、本書によるとバイキングは権力格差が極端に小さく、フラットな組織だったようです。

組織のリーダーは「偉い人」ではなく「チームをまとめる調整役」。メンバーの意見を聞いてコンセンサスを得ることに腐心していたようです。

またバイキングは個人主義者の集まりであったにもかかわらず、抜群のチームワークで成果を上げ、またその成果もできるだけ平等に分配されていたそうです。

 

ちなみにこの「平等」の考え方は、のちにスウェーデンにゆかりのある友人から聞くと、北欧の田園共同体においても「平等主義」の考え方が根付いており、富によって農場主と労働者を区別することはなかったのだそうです。階級差別はほぼ皆無で「腕のいい羊飼いかどうか」で評価されていたと言います。(''The shepher's life'' ジェイムズリーバングス)

また北欧に古くから根付いている価値観に「自分が特別な存在であると思ってはならない」という考えがあり、自分が特別な存在である事(お金持ちであること、何かを成し遂げたことなど)を人前で言ったり見せたりする事に居心地の悪さや罪悪感を持つ人が多いのだそうです。

 

つまり、北欧は平等主義の価値観が古くから根付いた地域であるため、官僚主義的な組織形態や肩書を嫌い、フラットな組織を好むということが納得できました。

 

また、経営学の本を読んでいると、例えばホンダのワイガヤのようにボトム層も含めた闊達な話し合いの場が、付加価値を生み、しいてはイノベーションをも生み出すといった事例をよく目にします。そういった点で、北欧のフラットで、コミュニケーションや対話を重視したマネジメントは、これらを生み出す源泉になっているのではと感じました。

 

組織の特徴を学ぶには、その根底に流れる文化や価値観を知ることも重要です。

儒教の影響を受ける日本で、どれだけ北欧の平等主義に根付いたマネジメントを参考にできるかはわかりませんが、「社員が指示待ち人間」「社内のコミュニケーションが不十分」などの問題を抱える組織に関しては、こちらの本は参考になるのではと思います。