国際結婚についてヒアリングー言葉の観点から-
先日の勉強会にて。
「多様性を考える」をテーマに講話 - Last Vacation~London life with kids~ (hatenablog.com)
質疑応答で
「国際結婚のご家庭で、親の言語でお子さんが話せず、親子で十分なコミュニケーションをとれないといったことはあるか?」
といった質問を頂いた。
私からは十分に答えられなかったので、何組かの国際結婚のカップルに話を伺うことに。ちなみにいずれも妻側が日本人。
■親子のコミュニケーションは困ってはいないが、課題はある。
いずれのご家庭も家庭内で使用する言語には夫婦ともに長けているので、現状困ってはいないとのこと。
ただ旦那様は日本語で日常会話は話せるとはいえ、ネイティブ並みというわけではないので、子供達が思春期に入るまでに英語圏への移住をしたかったといった話を聞いた。
お子さんたちが男の子ということもあり、同性の父親に頼りたいとき、ご主人ご自身が使いこなせる英語でコミュニケーションをとりたかったと言う。
■子供は外のコミュニティ言葉を学ぶ
もう一点興味深いことを話していた。
お子さんたちの幼少期、まだ日本に住んでいた時、ご主人の母国語で子供たちに話し続けても、子供達は自分のコミュニティ(保育園)で使う言語である日本語を使いたがったのだそう。親の母国語より、友達と話せる言語を好んだということだ。
現在、イギリスの現地校に通うお子さんたちはやはり英語が伸び、今では家庭内で英語で話す機会も増えたのだそう。
■国際結婚カップルの悩みは言葉だけじゃない
他にも国際結婚カップル特有の課題はあるようだった。
ご主人の母国の教育制度で成立している学校に通学している友人のお子さん(日本人学校的な)。それは「言語が理由で?」と尋ねると「アイデンティティを育むことが目的」という答えが返ってきた。
そういえばブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー』にもハーフの子供のアイデンティティに関する悩みを描写したシーンがあったっけ。
彼女は、言語は大人になっても身につけられるけど、文化、宗教、習慣などの理解は大人になってからだとなかなかスムーズに身に着けられない。だからこそ、そこの部分を大切にしていると話していた。
■言語に関する問題は多かれ少なかれある
もう一点、彼女からこんな話が聞けた。
在日ペルー人の子供たちに日本語教師をしていた彼女曰く
「日本語が話せない親と、親の母語で全ての思いを伝えられない子供達。将来の夢や進路など難しい話題になったとき、言語が理由で親子でコミュニケーションが十分にとれないケースは少なくない」と話していた。
■子供の言語問題
国際結婚のご家庭を見ると、沢山の言語を話せて、なんてうらやましいと思ってしまうが、言語、アイデンティティなど特有の課題を持っている話を聞き、いかにそれが安直な考え方だったかということを思い知らされた。
いろんなご家庭の考え方や事情があることは前置きしたうえで、日本での英語に対する偏った教育熱も考え物だな、と改めて感じさせられた。
両親が日本語しか話せず十分な英語力を持さない家庭環境で、安易に母国語である日本語を軽視して、英語にどっぷり漬からせてしまうのも、その後の親子のコミュニケーションを考えた場合、どこかでひずみが出るのではという点でだ。
つまり我が家みたいに夫婦とも英語が満足に話せないような家庭は、決して子供に対して、母国語である日本語を軽視してはいけないということだ。
英語学習においても母国語がベースになって第二言語が育つといった話は以下のブログにも書いた通り。
『言葉と教育』 バイリンガル教育におすすめの本 - Last Vacation~London life with kids~ (hatenablog.com)
我が家は、子供を現地校に行かせているが、確かに、すさまじいスピードで英語が身についていく様子は、やはり言語を身に着けさせるにはその環境に身を置くことだと実感する。また現地校だからこそ経験できる異文化体験は貴重な体験になることは間違いない。
けれど、日本語も継続的に伸ばす必要があることを改めて感じさせられた。
また言語だけ使えるようになればよいわけでいことも当然のことながら再確認できた。
言語とコミュニケーションって奥深い。